担当者の属人化で何が起きる?組織に潜むリスクと今日からできる対策
多くの組織で見られる経理・請求・会費管理などのバックオフィス業務。「この作業は○○さんじゃないとできない」「あのエクセルは本人しか更新できない」。このような状態が続いていませんか?これはまさに 属人化 と呼ばれる状態であり、組織が最も気づきにくく、しかし最も危険なリスクを生む要因です。本記事では、担当者の属人化によって何が起きるのか、具体的な問題と改善の方向性を解説します。
1. 引き継ぎ不能・業務停止のリスク
属人化が進むと、「担当者がいなければ業務が止まる」状態になります。
- 長期休暇
- 急病
- 退職
- 異動
こうした事態で、誰も作業の続きが分からない状態に陥ります。
結果として、
- 請求書発行が止まる
- 入金消込が遅れる
- 会費更新が間に合わない
- 月次締めが遅延
- 決算が長期化
といった重大な運用トラブルが発生します。
2. ミスの多発と収益計上の誤り
属人化している業務は、本人の感覚・経験に依存しているため、作業の根拠や判断基準が曖昧になりがちです。
特に経理・請求業務では、
- 前受金の計上漏れ
- 期間按分の誤計算
- 会費の年度区分ミス
- 手入力による誤変換
- 請求漏れの発生
など、組織の信用に直結するミスが起こります。さらに、本人以外が確認できない仕組みでは、ミスが発見されにくくなり、不正の温床にもなり得ます。
3. 業務効率の低下とコストの増大
属人化している業務は、本人が「手作業で工夫して成立」しているケースが多く、以下のような問題が顕在化します。
- Excelが複雑化(関数・マクロがブラックボックス化)
- 台帳が巨大化し、更新に時間がかかる
- ダブルチェックが困難
- 新人が育たない(教育ができない)
最終的には、担当者ひとりの時間に組織全体が縛られる構造になります。
4. ガバナンス不全・監査対応の負荷増大
公益法人や上場準備企業では、監査で最も指摘されるのが「属人化」です。
なぜなら、属人化には以下の特徴があるためです。
- 証跡が残らない
- 判断基準が不明確
- 作業ログがない
- ルールが人によって異なる
そのため、監査人や所轄庁は次のような指摘を行います。、
- 前受金処理の不正確さ
- 契約/請求/収益計上の不整合
- 内部統制が機能していない
- 収益の前倒し計上のリスク
属人化が残る限り、
監査対応の負荷は増え続け、適正な財務運営も困難になります。
5. 改善の方向性:属人化は「仕組み」でしか解消できない
属人化は「担当者が頑張る」ことで解決する問題ではありません。必要なのは、「仕組み」で業務を標準化することです。
文書化・マニュアル化
手順書・判断基準・例外処理などを整理。
業務フローの可視化
契約 → 請求 → 入金 → 会計の一気通貫管理。
システム化で標準化
などをシステムで統合することで、属人化は根本解消できます。
まとめ
属人化の最大の問題は、「問題が表面化した時には手遅れになりやすい」ことです。
- 請求漏れ
- 前受金誤処理
- 年度区分のミス
- 決算乱れ
- 監査指摘
これらのリスクを回避するためにも、今すぐ仕組みの見直しが必要です。属人化は“人の問題”ではなく、「仕組みがない」ことによって起きる組織問題です。システムによる標準化こそが、最も確実な改善策と言えます。


