前受金と仮受金の違い― 誤解されやすい2つの負債科目を整理する ―
会計処理の中でも頻繁に登場する勘定科目に「前受金」と「仮受金」があります。
どちらも貸借対照表の負債として計上される科目ですが、意味や使われるタイミングは大きく異なります。
実務の現場では混同されやすく、間違った処理のまま月次や決算に進んでしまい、後から修正が必要になるケースも少なくありません。
本コラムでは、両者の違いと使用場面を明確に整理し、迷いなく運用できるよう解説します。
前受金とは
「提供前のサービスや商品に対して、先に受け取った代金」を管理する勘定科目です。
使用例:
- Softwareや保守契約などのサブスクリプション型サービス
- 年会費・定期請求契約
- レンタル・リースサービス
- 工事・導入プロジェクトにおける着手金
特長
前受金は、顧客へサービスが提供されるまで売上として認識できません。
そのため「未提供分=負債」として処理し、提供期間に応じて売上(収益)へ振替(按分)していく必要があります。
前受金 → 売上へ振替(期間按分)
という流れが発生するのが特徴です。
仮受金とは
「入金の内容が確定していないお金」を一時的に管理する勘定科目です。
使用例:
- 入金額に対する請求書が未作成
- 顧客不明・名義不一致入金
- どの買掛金・債権に紐づくか不明な入金/li>
銀行振込などでは、入金内容が判明するまで時間がかかることがあります。
また、まとめ請求や名義違いによる照合作業中にも使用されます。
仮受金はあくまで一時的な科目であり、内容が特定できたら以下に振り替えます。
- 売掛金
- 未収金
- 前受金/li>
前受金と仮受金の比較表
| 項目 | 前受金 | 仮受金 |
|---|---|---|
| 性質 | 将来提供するサービスや商品代金を事前に受領したもの | 入金内容が不明なため一時的に計上 |
| 会計分類 | 負債 | 負債 |
| 発生タイミング | サービス提供前の確定契約による入金 | 入金内容が特定できない、または未処理のもの |
| 後処理 | 提供期間に応じて売上に振替(期間按分が必要) | 内容判明後、売掛金・未収金・前受金などへ振替 |
| 時間性質 | 計画的・継続的 | 一時的・仮置き |
実務で起こりがちな混乱ポイント
● 課題1:前受金と仮受金の区分ミス
「契約済の先払いなのに仮受金のまま月次が締まっている」
→ 決算で修正仕訳が必要になり監査対応も複雑化します。
● 課題2:前受金の按分漏れ
特にサブスク・保守契約企業で頻発します。
→ 収益の前倒し計上となり、監査指摘や内部統制不備につながることも。
まとめ
前受金と仮受金はどちらも負債科目ですが、意味は明確に異なります。
- 前受金:提供前のサービス代金(必ず売上振替が必要)
- 仮受金:内容未確定の一時的な入金(後で科目振替が必要)
特に継続契約型ビジネスでは、前受金管理と期間按分処理は必須となり、Excel管理ではミスが発生しやすくなります。
適切な会計処理のためには、
契約情報と入金情報を紐づけて管理できる仕組み(システム運用)が重要です。
サブスクに強い販売管理システムAllyなら
これらに該当する契約では、請求額=売上額ではないという点が最も重要です。 サブスク・保守・長期契約が増える現代では、前受金管理と期間按分処理の自動化が企業の会計品質と運用効率を左右する時代になっています。


